国土交通省は16日、社会資本整備審議会住宅宅地分科会(分科会長:齊藤広子横浜市立大学国際教養学部教授)の59回目の会合を開いた。
冒頭、国土交通省が住生活基本計画(全国計画)の見直し・改定に当たり、10月に行なわれた第58回同分科会で委員から出された意見を踏まえた論点を整理して説明。総論として都市部と郊外部など、地域性に配慮した住生活の考え方等の必要性があるとした上で、「住まうヒト」「住まうモノ」「住まいを支えるプレイヤー」の3領域に区分。それぞれ、他の区分と関連させながら論点を設定すべきだとした。
例えば、「ヒト」については、単身世帯の割合増加や、子供が全員親元を離れる「エンプティネスト世帯」の住み替え、子育て世帯の住まい、セーフティネット、アフォーダブルハウジングについて課題を指摘。また、「モノ」については住宅ストックの在り方や、ストックの更新、空き家予防、カーボンニュートラル、災害リスクなどについて、「プレイヤー」では、建築大工をはじめとした技能者、建築士などの技術者の確保・育成をはじめとした、住生活行政を支える基盤・技術の強化の必要性が指摘された。
こうした、委員からの指摘に対して、3つの領域それぞれにある論点をとらえ直し、関連付けながら整理。2050年までに直面する住生活をめぐる社会課題を「人生100年時代」「孤独孤立」「居住支援」「アフォーダビリティ」「カーボンニュートラル」「住宅ストックの有効活用」「安全確保」「担い手減少」として8つの項目を設定。検討内容の方向性と、それぞれを関連付けた論点について説明。「実需層が都市部を中心とした既存住宅を取得することで希望する住生活を実現するための環境整備をどうすべきか」「活用されない住宅が外部不経済を与えないよう、持家・借家の終活をどう考えるか」などといった論点を示した。
これらに対して出席委員からは、「都心部の住宅価格が高騰する中で、都市機能の担い手となるエッセンシャルワーカーの住まいをどのように安価に提供するかといった議論が必要」「『家族ありき』でつくられてきた社会保障制度の仕組みをどう見直していくかも重要。住宅セーフティネット法にも関連することなので、厚生労働省と議論してもらいたい」「老朽化した賃貸住宅を高い防災性を持たせた建物に建替えたいと考えても、借地借家法が壁になって更新が進まないので、制度整備が必要」などといった声が挙がった。
次回会合は25年1月28日に開催。その後5月まで毎月開催し、11月ごろをめどに中間とりまとめを行ない、その後新たな住生活基本計画(全国計画)の案について議論。26年3月の閣議決定を目指す。