(一社)100年企業戦略研究所(代表理事:堀内 勉多摩大学大学院経営情報学研究科教授)は21日、「東京都心5区(千代田区、中央区、港区、渋谷区、新宿区)」に特化し、そのアーバンプロファイルを分析したレポートを発表した。同研究所アドバイザーの市川宏雄氏(明治大学名誉教授、大都市政策研究機構理事長)が、都心5区の都市力を森記念財団戦略研究所の「都市特性調査」を基に分析。さらに、公的データ等を用いてコロナ禍を挟んだ人口や地価の推移を踏まえ、都心5区の将来を展望した。
同研究所は2018年4月に(株)ボルテックスの社内シンクタンクとして発足。より中立的立場で研究に取り組むため、22年2月に一般社団法人化し、外部研究機関や各界有識者と連携して、長寿企業や企業の持続可能性に関する研究活動に取り組んでいる。
レポートでは「経済・ビジネス」「研究・開発」「文化・交流」「生活・居住」「環境」「交通アクセス」の6分野の都市機能で評価した都市特性で、いずれも千代田区・港区を筆頭に都心5区が高い評価を得ており、「23区の総生産(21年)のうち都心5区は49.1%を占めるが、企業の付加価値額(企業が事業活動によって生み出した価値)に絞れば89%であり、より多くの収益を生む企業とそれを生み出す人々が集まる、圧倒的な業務機能・商業機能の集積がある」(市川氏)とした。6分野の都市機能では、東京の都市形成の歴史的経緯もありいずれも千代田区、中央区、港区の数値が突出し、鉄道ターミナルを軸に発展してきた渋谷区・新宿区はやや低いが、「再開発が進む渋谷区が追いつきつつあるが、1970年代の再開発がベースの新宿は勢いがない」(同氏)。また、臨海部に開発余地を残す港区のポテンシャルも高いとした。
東京都全体の人口については、コロナ禍の20年4月から21年末までは減少したものの、22年1月の時点で再び増加に転じ、23年は年間で約7万人の増加と都心回帰が進行している。その中身をコロナ禍前の19年(約9万4,000人増)と比べると、19年は日本人が約6万8,000人、外国人2万5,000人だったのに対し、23年は日本人は約3,900人、外国人が6万6,000人と外国人の大幅増となっている。都心エリアは中国人と韓国人の富裕層が牽引しており、千代田区では17〜24年の外国人人口増加率は44.8%、港区でも67.9%と増加が顕著となっている。こうした状況下から「麻布台ヒルズのような、外国人をメインターゲットにした開発がさらに拡大していくはずだ」(同氏)とした。
都区部の地価水準についても、住宅地・商業地ともすでにコロナ禍前(20年)を上回っており「1990年代後半のバブル経済崩壊、2009年のリーマンショックによる地価の下落幅と比べれば、悲観するほどのものではなく。都心5区の地価上昇率も25年にはコロナ禍前の伸びに戻ると思われる」(同氏)。
同研究所では、今回のレポートに続き、「都心5区に立地するオフィスの状況」「東京都心の大規模再開発」をテーマにしたレポートを発表していく予定。