(一財)澄和(理事長:村石久二氏)は29日、東京會舘(東京都千代田区)において「第9回澄和Futurist賞」表彰式を開催した。
同賞は、「平和を願い、自然と調和し、和む世界を目指す」とする同財団の理念に沿う「非戦・平和関連」「環境保護」「社会貢献」などをテーマとした活動を継続する個人・団体を毎年表彰するもの。2024年は、「澄和Futurist賞」に指揮者の佐渡 裕氏、漫画家の高橋陽一氏、「澄和平和活動賞」に講談師の神田香織氏が選ばれた。
佐渡氏は、世界的な指揮者として活躍する一方、テレビ音楽番組「題名のない音楽会」の司会や、新日本フィルハーモニー交響楽団の音楽監督を務める他、20年以上「1万人の第九」を指揮。さまざまな年代や背景を持つ参加者と練習を重ねることで心を通わせてきた。また、全国の小学生から高校生で構成された「スーパーキッズ・オーケストラ」の指揮や、学校においてボランティアで吹奏楽の指導を続けるなど、音楽を通して「生きる歓びや人と人とがつながることの大切さ」を伝え、社会貢献を続けている。
高橋氏は、サッカー漫画「キャプテン翼」を43年間にわたって連載。世界中の少年少女に夢と希望を与えてきた。主人公をはじめとした登場人物の個性と多様性、夢に向かって挑む個の努力や仲間を信じることの大切さ、チームワークや友情など、作品が持つ普遍性は国や年代を超え多くの共感を得ている。作品中で「サッカー世界平和宣言」を表明するなど、平和が大切ということを子供たちに教えてきた。
神田氏は、社会派講談の第一人者として、原爆がもたらした悲惨な状況下で力強く生きる主人公を描いた漫画「はだしのゲン」を題材とした講談を38年間にわたり1,000回以上、子供から大人まで延べ10万人以上に語り伝えてきた。
懇親会の挨拶で、佐渡氏は「数年前に、シリアの地下にある病院のドキュメンタリー映画の中で、思いがけないことがあった。毎日のように爆撃を受けた患者さんが運ばれて手術を受けるのだけれども、お医者さんが大きな手術が成功した後に、助手にご褒美だと言って、僕が指揮している『1万人の第九』の動画をYouTubeで見せていた。僕の活動がシリアの人たちにまで届けられたというのを知り、すごくうれしかった。これからもこの賞を胸に皆さんに感動を届けていきたい」などと話した。
村石理事長は「私にとって平和活動も経営も根っこは同じで、すべてが和であり、和みに本質があると思っている。昨年は製作委員会として参加した映画『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』が、観客動員数350万人を超える大ヒットとなり、アジアの国々でも上映されている。今後も国境を越えて平和への思いを共有していきたい」などと挨拶した。
会場には、政界、スポーツ界、芸能界、メディアなどの関係者が多数参加し、盛会となった。